p.17 [2]の訳

 桜は咲き初めた花からして人の心もうきうきとさせ,昨日が暮れ,今日が暮れて(日がたち)どこもかしこも花の咲きそろった頃は,(その桜の花の中で)花をつけない木々の梢さえも美しく,日が暮れてしまうと,また明日も見に来ようと(心に)決めておくのであるが,(その日が)雨が降ったりするのは残念なことである。やがて春も終わりになってゆくと,(桜の花が)すっかり散り尽くしてしまう世のありさまを見てきたが,また来る(桜の咲く)春を心だのみにするのもはかないものである。あるいは遠い山の桜,青葉がくれの遅咲きの桜,若葉にまじる桜など,(桜は咲く時期や場所などによって)風情がそれぞれ一様ではない。桜はあらゆる花にすぐれたもので,昔から今日まですべての人を風雅の道に誘うはたらきをしている。
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