p.19 [2]の訳

 元啓という者がいた。(彼が)十一歳のとき,父はその妻の言葉に従い,年とった(自分の)親を山に捨てようとした。元啓は一生懸命に忠告したのであるが,その考えを入れず,元啓と二人で,間に合わせに手輿を作って,(その手輿に親を)乗せて深山の中に捨てた。元啓が「この輿を持ち帰ろう」と言うのに,父が「もう必要がない,捨てなさい」と言うので,「お父さんの年とったとき,またこれに乗せて捨てようとするためです」と言った。すると父は(はっと)気がついて,「私が父を捨てようとすることは,本当にいけないことであった。(私の子も,私のしたことを)学んで,私を捨てることがあるだろう。(子も)いけないことをしてしまうだろう」と思い返して,父をいっしょに連れて帰り,孝行した。
 このことが世間に知られて,父を教え,祖父を助けた孝行の者であるとして(人々は)孝孫と(元啓を)呼ぶようになった。
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