p.22の訳

 春は,あけぼのの頃がよい。だんだんに白くなっていく山に接する空のあたりが,少し明るくなり,紫がかった雲が細くたなびいているのがよい。
 夏は,夜がよい。月のある頃はもちろん,月のない夜でもやはり,螢がたくさん飛びかっているのがよい。また,ほんの一つか二つ,ほのかに光って通り過ぎるのも,風情がある。雨など降るのも,趣きがある。
 秋は,夕暮れがよい。夕日があたりに光をまき散らしながら,もう山の頂きに落ちかかろうとする頃,からすがねぐらへ帰ろうとして,三羽四羽,二羽三羽などと,帰りを急ぐ姿までもしみじみと風情がある。ましてや雁などが連なって飛んでいるのが小さく見えている様は,とても趣き深い。日が沈んでしまって,(聞こえてくる)風の音,虫の音など,またいいようもなくすばらしい。
 冬は,朝早い頃がよい。雪が降ったのはいうまでもない。霜がとても白いのも,またそうでなくても,とても寒いのに,火を急いでつけて,炭を運んで行く姿も,とても似つかわしい。昼になって,寒さがゆるんでくると,火桶の火も,白い灰が多くなってしまい,よい感じがしない。
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