p.24 [2]の訳

 四月の末か,五月の一日の頃,橘の葉が濃くつやつやと青い中に,花が真白に咲いているのが,雨の降った翌朝などにしっとりと濡れている風情は,世にまたとないおくゆかしい美しさである。その香り高い花の中から,実がまるで黄金の玉のように色あざやかにのぞいている趣きなど,世にもてはやされている,朝露に濡れた朝ぼらけの桜の美しさにも劣らない。その上,ほととぎすがその身を寄せる木と思うからであろうか,やはり全く言葉も及ばないすばらしさである。
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