p.25 [2]の訳

 うれしいもの まだ読んだことのない物語の一の巻を読んで,とても続きを見たいとばかり思っていて,その残りを見ることのできたとき。ところがさて,がっかりする場合もある。
 高貴な方の御前に女房たちが大勢控えているとき,昔あったことであれ,今お聞きになったこと,あるいは世間でうわさしていることであれ,お話になるとき,(そのお方が)自分に視線を合わせてお話しになるのは,とてもうれしい。
 遠い所はもちろんのこと,同じ都の中でも離れていて,自分にとってだいじに思う人が病気をしているのを聞いて,様子はどうかと,見舞もできないことをやきもき嘆いているとき,全快したということを人伝てに聞くのも,とてもうれしいことである。
 愛する人が,人にほめられ,高貴なお方などが,みどころのある者とほめておっしゃるとき。
 何かの折(詠んだ歌),あるいは人とやりとりした歌が,評判になって,(だれかの)打聞(歌などを書き留めるメモ帳)などに書き入れられるとき。自分のこととしてはまだそんな経験はないけれども,それでも,想像してこれは書く。
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